HOME > 2013年新春のご挨拶




2013年、新しい年を迎えました。
平素より本ホームページをご利用いただいている皆さまには、心からお礼申し上げます。
今年もよろしくお願いいたします。


今年トップのお知らせでは、起立性調節障害の診断基準に関する最新の研究成果についてご紹介したいと思います。昨年11月に、起立性調節障害の診断基準について最新のものを掲載するとお知らせしました。少し遅れましたが、今回はそちらのご紹介です。

起立性調節障害Support Groupが推奨する起立性調節障害の新しい診断基準は、以下の通りです。

(1)3つ以上のOD症状があり、かつ(2)いずれかのサブタイプに合致する

『(1)3つ以上のOD症状』とは、以下の11症状のうち3つ以上当てはまるということです。

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    1. 立ちくらみやめまい
    2. 起立時の気分不良や失神
    3. 入浴時や嫌なことで気分不良
    4. 動悸や息切れ
    5. 朝なかなか起きられず午前中調子が悪い
    6. 顔色が青白い
    7. 食欲不振
    8. 腹痛
    9. 倦怠感
    10.頭痛
    11.乗り物酔い
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『(2)いずれかのサブタイプに合致する』とは、日本小児心身医学会ガイドラインで定めている以下の4つのサブタイプのうちいずれかに合致する、ということです。

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    起立直後性低血圧
    体位性頻脈症候群
    神経調節性失神
    遷延性起立性低血圧
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起立性調節障害の新しい診断基準

起立性調節障害の診断基準の経緯について簡単に述べます。

起立性調節障害の診断基準は、最近まで1964年に発表された大国の基準表1)が使われていました。しかし、近年、新しい検査法の開発によって診断方法が非常に進歩したことから、2005年、日本小児心身医学会が新しい診断基準や治療法を掲載した「小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン2005(ガイドライン2005)」*1)を作成したのです。ガイドライン2005では、大国の基準を満たし、しかも新しい検査法(新起立試験)によっていずれかのサブタイプに合致した場合、起立性調節障害と診断することにしました。

その後、同学会は英語版ガイドライン(*2)を2009年に発表しました(Guideline 2009)。海外に発表する場合、エビデンス(科学的根拠)が乏しい研究は学問的価値が低くなります。そこで、Guideline 2009では、エビデンス(科学的根拠)が明確な新起立試験を重視し、エビデンスの乏しい大国の基準は、身体症状項目のみを採用し、それをチェックリスト(ODチェックリスト)という位置づけにしました。

ODチェックリストは11項目ありますが、その診断妥当性(OD症状がいくつ以上あれば、ODを強く疑えるのか)は検証されておらず、これも科学的根拠はありませんでした。

そこで、2012年、田中らはODチェックリストの診断妥当性についてフィナプレス起立検査の正確な結果と比較検証し、学術雑誌に報告しました(*3)。これによると、「11項目のうち3項目以上」という基準が、最も妥当性が高くなりました。この研究によってODチェックリストの科学的根拠が明確になり、日常診療で使用できるものと思われます。
参考資料として学術雑誌に掲載された抄録を最後につけていますのでご参照ください。

以上のことから、先ほどご紹介した『(1)3つ以上のOD症状』があり、『(2)いずれかのサブタイプに合致すること』が、現時点で最も科学的根拠のある起立性調節障害の診断基準と考えられます。ただし、これは日本小児心身医学会の公式な見解ではありません。起立性調節障害Support Groupが考える最新の科学的根拠のある診断基準とご理解ください。

今後の動向について

さて、ようやく科学的根拠のある起立性調節障害診断基準にブラッシュアップされました。しかし、科学的根拠があるだけでは日常診療に役立つかどうか、判断できません。今後、数多くの医師が臨床での使用をくり返して、その信頼性が確立していくだろうと考えられます。

一方で、起立性調節障害の根本原因、病態に関する未知の部分を解き明かしていく研究が必要です。

たとえば、サブタイプについては、現時点では4つありますが、一昨年、新しく2つのサブタイプが報告されました(*4)。新しい2つは、現在の検査方法(新起立試験)では発見できません。非侵襲的連続血圧測定装置や近赤外分光計によるリアルタイム脳循環測定装置などが必要になるので、特殊な医療機関でしか診断してもらえません。

患者さんのなかには、OD症状があるのにいずれのサブタイプにも当てはまらないため、起立性調節障害と診断されなかった、という子どもさんもいらっしゃると思われます。

また、治療に関しては、最近、新しい治療方法も出てきました。ガイドライン2005やGuideline 2009には未掲載でしたが、今年に発表された専門医向けODガイドライン(*5)には、より強力な薬物療法が記載されています。

それらの効果については、起立性調節障害Support Groupのホームページで紹介しているDVD「保護者向けアドバイス 起立性調節障害 最新の治療 その効果について」https://inphs-od.com/order/order_dvd/index.php で一部、紹介されています。薬物療法を含めて、さらに新しい治療の開発研究が今後期待されます。



【参考資料】

引用文献3の抄録

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小児起立性調節障害(OD)診断・治療ガイドライン(GL)英語版(日本小児心身医学会編)では、診断手順の第1段階でチェックリストを用いたスクリーニングを実施する。このスクリーニングは、旧OD診断基準に従い大症状と小症状の組み合わせによって陽性者を判別しているが、その感度、特異度については検証されていない。本研究は、数種類のスクリーニング法の妥当性を検討し、より適切なスクリーニング法を決定することを目的とした。対象は、一般公立小学校4年生から高校3年生の151名。OD診断項目の自記式調査票に回答させた(回収率88.7%)。質問には「はい」、「ときどき」、「いいえ」の3件法で回答を求め、次の4つの判定方法について感度、特異度を求めた。
(I)
旧OD診断基準に従い(1)大症状3以上、又は(2)大症状2、小症状1以上、又は(3)大症状1、小症状3以上を陽性とする、
(Ⅱ)
大症状と小症状を区別することなく、症状を2つ以上有する者を陽性とする、
(Ⅲ)
同じく3つ以上有する者を陽性とする、
(IV)
同じく4つ以上有する者を陽性とする。
すべての対象者にフィナプレス起立試験を実施しGLにしたがってODを診断、上記の判定方法について、感度、特異度を求めた。フィナプレス起立試験でODと診断した者は12名であった。スクリーニングチェックリストの各判定方法の感度は、(Ⅱ)と(Ⅲ)が(I)よりも高く、特異度は(I)と(Ⅲ)で同等であった。OD診断アルゴリズムにおけるチェックリストの判定では、従来のように大症状と小症状を分けるよりも、大症状と小症状の11症状のうち3症状以上を有するものを陽性とする判定方法がより適している。
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【参考資料】

(表1)大国の診断基準。ガイドライン2005では「旧OD診断基準」

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  【大症状】
   A.
立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい
   B.
立っていると気持ちが悪くなる、ひどくなると倒れる
   C.
入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる
   D.
少し動くと動悸あるいは息切れがする
   E.
朝なかなか起きられず午前中調子が悪い

  【小症状】
   a.
顔色が青白い
   b.
食欲不振
   c.
臍疝痛をときどき訴える
   d.
倦怠あるいは疲れやすい
   e.
頭痛 f. 乗り物に酔いやすい
   f.
起立試験脈圧狭小化16mmHg以上
   g.
同収縮期圧低下21mmHg以上
   h.
同脈拍数増加1分間21以上
   i.
同立位心電図のTIIの0.2mV以上の減高その他の変化

  【判 定】
   1.
大症状3以上
   2.
大症状2、小症状1以上
   3.
大症状1、小症状3以上
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【引用文献】
   (*1)
日本小児心身医学会・小児起立性調節障害ガイドライン2005.子どもの心とからだ 2007; 15(2): 89-143
   (*2)
Japanese Clinical Guidelines for Child Orthostatic Dysregulation Ver.1 Pediatr Int 2009; 51:169-179
   (*3)
田中英高、梶浦貢、山口仁、竹中義人、藤田之彦。小児起立性調節障害のスクリーニングチェックリストに関する検討。日本小児心身医学会雑誌2012;21:166-171
   (*4)
田中英高。小児起立性調節障害 最新の知見 小児起立性調節障害(OD)の新しいサブタイプに関する研究日本自律神経学会総会プログラム・抄録集64回Page50(2011.10)
   (*5)
日本小児心身医学会 起立性調節障害ワーキンググループ。専門医向け小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン2011.子どもの心とからだ20112;21: 191-214



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