子どものこんな症状は、起立性調節障害
小児起立性調節障害の全人的治療
起立性調節障害相談室(Q&Aコーナー)
低血圧サイト

企画・監修:田中 英高
(大阪医科大学小児科准教授)
企画協力:松島 礼子
(済生会吹田病院小児科)

起立性調節障害 最近のトピックス


起立性調節障害のテレビ報道
見逃してしまった! という皆さまへ

最近、起立性調節障害という病気の認知度が、社会でも少しずつ上がってきているように思います。思春期に最も多く発症する起立性調節障害という病気については、これまでは、子どもをもつ保護者や学校関係者もその病名すらほとんど知らなかったことを考えると、患者さんを取り巻く状況はずいぶんと改善されたと考えます。

病気の認知度が上がった理由としては、メディアの影響が大きいと思われます。テレビ、ラジオ、新聞でもたびたび、報道されるようになったからです。テレビでは2005年5月26日(大阪NHK)、2010年2月10日(大阪朝日放送)に放映されました。今月中にもどこかの放送局で放映されるようです。ただし、詳細は不明です(お伝えできずにすみません)。

一般的に、テレビ報道では特集ニュースといっても数分以内の短時間の放映です。あっという間に終わってしまいますね。そこで「放映を見たことはあるけど、見たことに興奮して内容まで覚えていない」とか、「見損ねた!」という人のために、ぜひ、再放送するとか、YouTubeでいつでも見られるようにするとか、考えていただきたいな、と思っています。

そこで、起立性調節障害の報道を見逃してしまった皆さんのために、『テレビ報道の起立性調節障害が10倍よく分かる』解説を監修の田中英高先生に書いていただきました。取材を受けたときには、おおむね、以下のようなことをディレクターに懇懇と話しているそうです。

〜・〜Dr田中の起立性調節障害取材時のコメントのまとめ〜・〜

1.起立性調節障害という病気は、発見や診断が遅れることが多い。その理由は、起立性調節障害という病気の特性にある。起立性調節障害の本態は、自律神経系による起立時の循環調節機構が破綻することにある。すなわち、起立や座位など頭を上げる姿勢では脳循環をはじめ全身への血行が悪くなり、立ちくらみ、だるさ、頭痛、失神などさまざまな身体症状が出る。しかし、身体を横にすると楽になるので、子どもはごろごろするようになる。

2.しかも、この循環調節異常は、午前中に著しく、午後から夕方、夜にかけては軽減するため、起立性調節障害の子どもは、朝、なかなか起きることができず午前中はごろごろしているものの、夕方から夜になると元気になり、普通の子どもと同じようにテレビやゲームでよく遊ぶ。さらに悪いことには夜は目が冴えて寝られないので、夜更かしになりがちである。起立性調節障害という病気の知識が無ければ、ただのゲームをやり過ぎて朝起きれない「怠け者」としか見えない。周囲の大人(保護者や学校関係者)からは「根性なし」というレッテルを貼られてしまい、病気として認知されない。ひどいケースでは、「病気でもないのに、病院に行くな!」と怒り出す大人もいる。

3.このような周囲の無理解と、「怠け者」や「根性なし」というレッテルは、起立性調節障害の子どもの心を深く傷つけ、自尊感情の低下(自信をなくす)を招く。起立性調節障害の発見が遅れ症状が重症化した子どもでは、ほとんど例外がないほど心の傷が大きく、回復に時間がかかり、自宅にひきこもり社会復帰が遅れる。病院での治療が必要な起立性調節障害の約半数に不登校を伴っているという科学的研究がある

4.このような悲劇を少しでも少なくするためには、保護者や学校関係者が起立性調節障害に関して充分な知識と理解をもつことが望まれる。

さらに子どもを支えるためには、身体面だけでなく心理社会的側面も含めた全人的視点からのケアが必要であり、医療-教育-心理-保護者との連携が欠かせない。これを実現するために、研修会や一般市民への啓発事業として起立性調節障害ウェブサイトを運営しているのが、起立性調節障害サポートグループであり、大阪医科大学病院やその関連病院の小児科医師が中心になっている。

5.一方、起立性調節障害は特殊な病気ではなく、軽症を含めると小学校高学年〜中学生の約1割がかかるようなよくある病気である。子どもが起立性調節障害かな、と疑ったときには、専門医にかかるよりは近隣のプライマリケア医(かかりつけ医師)を受診するほうがよい。しかし、小児科医以外の医師には起立性調節障害の認知度はあまり高くなく、診ることができないと、断られるケースもある。

そこで、日本小児心身医学会ではプライマリケア医が起立性調節障害を標準的な方法で診療できるように、「小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン」を作成した。病気の初期には、このガイドラインに沿って診療するプライマリケア医が増えてきた。

しばらく治療をしても改善しない場合には、専門医を紹介してもらうことになる。ただし、専門医は数が少ないので少々遠方まで通院する覚悟が必要だ。したがって、起立性調節障害かな、と疑った場合には、かかりつけ医に、まず相談するのがよいだろう。

6.医療機関を受診した起立性調節障害の3〜4割の人が不登校などになっている。朝、起きられず遅刻や欠席を繰り返したことが原因で学校や社会から孤立したり、あるいは子どもに何らかの心理社会的ストレスが潜在すると、不登校や長期のひきこもりになるケースも少なくない。

わが子がこのような状況になれば、保護者のなかには、子育てが至らなかったのではないかと、自らに原因を求めたり、配偶者を責めたりして夫婦関係に溝ができることもある。さらに子どもがニートになるのではないかなど、将来を悲観してひどく落ち込み、親のほうがうつ病を発症することもある。家庭が暗くなれば、子どもの病気は治るものでも治らなくなってしまう。

7.誰しもの人生において、思いもかけない困難や苦難、そして絶体絶命の逆境が起こるのは世の常である。そのような逆境のさなかにいる人は、まさに鳴門の渦潮に巻き込まれて溺れ死んでしまうような気分になるだろう。しかし、そのような渦中にある人に捧げたい言葉がある。それは「人生は一冊の問題集」という言葉だ。

8.人生というものは、難問の連続である。楽しみ以上に困難が多い。2500年前に大悟した釈尊が、人生は苦である、とすでに喝破(かっぱ)したように、人は生まれる前から苦が始まり、生老病死の四苦から逃れられない存在である。「苦」を克服するために、釈尊は四諦八正道(したいはっしょうどう)という教えを説いたが、これを現代風にいうと、「人生は一冊の問題集」ということになる。魂の向上のために、自分の器にちょうど見合った問題集が用意されている、だから、逃げずに前向きに試行錯誤すれば必ず道は開ける、という考え方である。どのような逆境にあろうとも、この言葉を旨にして、自分たち家族の「明るい未来を信ずる」心を持ちつづけていただきたい。

いま、まさに起立性調節障害という難問を突きつけられているご家族もいらっしゃるでしょう。苦しいとは思いますが、前向きに試行錯誤をして、必ずや難問を解いていただきたいと思っています。問題を解くためのヒントをこのサイトでは発信していきたいと思います。

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